うぇぶ提督渾身の小話 「天龍に誓う」
あれは私が横須賀鎮守府に着任して2日目の出来事だった。
長良型軽巡洋艦1番艦 長良を旗艦に据え、駆逐艦 電、磯波、白雪からなる水雷戦隊で鎮守府正面海域の警備任務に就いていた。まだ艦隊指揮の勝手を理解しておらず、任務を受領することもせずに出撃を繰り返していた。
そんなとき、敵主力艦隊に完全勝利を収めた際に我が鎮守府へやって来たのが、私にとって2隻目の軽巡洋艦、天龍型軽巡洋艦1番艦 天龍であった。第一印象は「つよそう(主に胸が)」だった。
早速天龍を第一艦隊に編入し、出撃を繰り返した。当時の敵艦隊は駆逐艦が主であり、軽巡洋艦2隻を擁する我が第一艦隊の敵ではなかった。砲撃で敵艦隊に大きな損害を与え、雷撃戦で殲滅する。こちらの被弾はごく僅かであり、理想的な展開が続いた。…今思えばそれがこの出来事のきっかけなる、そう、『慢心』が私の心の那珂…いや中に巣食い始めた瞬間でもあったのだ。
あの時も、いつも通りの出撃だった。整備・補給、ともに万全。鎮守府正面海域、南西諸島沖。そろそろ突破してやるぞという意気込みに答えるかのように羅針盤は北東を示した。対するは敵前衛艦隊、軽巡1、駆逐2。長良、天龍の砲撃で早々に駆逐艦2隻を撃沈。残るは軽巡洋艦1隻。駆逐艦の攻撃で小破させるも撃沈には至らなかった。「敵もやるじゃないか」私は勝利を確信していた。
戦闘は雷撃戦へ移行した。第一艦隊全艦から敵巡洋艦に向かって雷跡が伸びる。敵軽巡が轟沈した、その時だった。一本の雷跡が天龍に突き刺さった。
天龍は中破。他は無傷。今の私なら迷わず撤退の指示を出す場面である。しかし、当時の私はそうしなかった。「せっかくのBOSSルートだ」「天龍以外は無傷だし、天龍の耐久も駆逐艦程度は残っている」「我が第一艦隊は、つよい(確信)」そう考えた私は、進撃の指示を出した。
敵主力艦隊との戦闘の内容は覚えていない。覚えているのは、勝利を収めたことと天龍が轟沈したことだけだ。「また建造すればいい」「そのうちドロップする」そう自分に言い聞かせたが、その時着任した天龍型軽巡洋艦2番艦 龍田はこう言った。
「天龍ちゃんがご迷惑かけてないかなぁ?」
私の心は大きく揺さぶられた。私は私の『慢心』を恥じた。そしてその時誓ったのだ。「二度と艦娘を轟沈させない」と。
横須賀鎮守府勤務でありながら、私の攻略速度は遅い。未だに3-2も4-4も突破していない。だが、それでいい。あの哀しみは二度と繰り返さない。轟沈した天龍に誓う。今までも、そしてこれからも、私の被轟沈数は『1』のままである。
現在、復帰した天龍は龍田とともに第六駆逐隊を率いて資源輸送任務に従事している。
(うぇぶ提督)